私は、生息数が減っているといわれている「物理屋さん」です。
細かいことを言うと、理学部の物理ではなく、工学部の物理なので、少し応用よりです。
というわけで、たまには、とことん物理ネタを書きたいと思います。なお、普通の教科書に載っているようなことを書く気はないので、悪しからず。
そもそも物理学とは、「自然を測定し、測定した数値を数学を使って解析する」学問です。
「自然科学は全部そうだろ!」と言われるとその通りですが、物理学は他の自然科学よりも、「測定する」ことに重きを置いていると思います。温度計を作る人は、たいてい化学者でも生物学者でもなく物理学者です。
自然科学に測定は必須で、測定器は物理学者が作るのだから、物理学は自然科学のベースと言えます。これを物理学者の手前味噌と言います。なんちゃって。
せっかくなので、温度計について考えてみます。
昔からある温度計と言えば、水銀温度計です。熱膨張、つまり水銀の体積が温度で変化することを利用して温度を測定します。
電気的な方法で温度を測定できると、電子機器にとっては便利です。ということで、抵抗式の温度計なんかはよく利用されます。電気抵抗が温度で変化するということを利用して温度を測定しています。
輻射を利用した体温計というのもあります。人体から放出される赤外線のスペクトルが温度に依存するということを利用して温度を測定しています。
と、既存の温度計の話をしてもつまらないので、変な温度計を考えてみます。
例えば、アクリル板の屈折率は温度に依存します。アクリル製のプリズムにレーザー光を当てたとき、その曲がり方は屈折率に依存します。ということは、曲がり方を調べれば、温度が測定できるはずです。(
参考)
金属の弾性率は温度に依存します。温度が高いと柔らかくなります。ということは、ばねの強さを測定すれば、温度が測定できます。(
参考)
極論すれば、電車に乗っているときに、その振動を解析すれば、その日の気温が分かるはずです。できると思った方は、ぜひ挑戦してみてください。(^o^)
コーヒーの中にミルクを一滴たらすと、ミルクは拡散します。このときの拡散の仕方は温度に依存します。ということは、コーヒーに入れたミルクを観察すれば温度が測定できます。コーヒーの温度が高いほどミルクは早く拡散しているはずです。(
参考)
拡散の様子を調べて温度を測定するなんて面倒に思えますが、極低温の温度測定では同様の現象が利用されています。私は、学生の頃、この話を聞いて感動しました。
クッキーを焼いたときのサクサク感は、オーブンの温度に依存するはずです。ということは、クッキーを食べたときのサクサク音を録音して解析すれば、オーブンの温度が分かるはずです。
もちろん、クッキーのサクサク感は生地にも依存するので、温度とサクサク音が1対1に対応するように、焼き方を決めないといけません。このような作業を「校正」と言います。どんな測定器でも校正は必要です。
まぁ、「クッキーを焼くために温度を測る人」はいても、「温度を測るためにクッキーを焼く人」はいないと思いますが。
下らないことを書いていたら長くなってしまいました。orz
大事なことは、「物理学は、まず測定に始まる」ということです。かのガリレオだって、心拍数を使って振り子の振動周期を測定していました。
本来なら、データを測定したら、数学を使った解析が続きます。ですが、長くなりそうなので、またいつか、気が向いたときにします。
物理学も他の学問と同様に細分化されています。力学、熱力学、電磁気学などなどです。本当は各分野についても書こうかと思っていたのですが、さらに、長くなりそうなので、これも、またいつか、気が向いたときにします。