残念ながら私は天才じゃないんで、つまらないことでいろいろ悩んじゃいます。馬鹿ならば悩むこともないのでしょうが、少しばかり頭があるから性質が悪いです。最近は、多変数の積分の変数変換について悩んでました。
一般に適当な関数fの面積分を変数変換すると、
∫∫ f dx dy=∫∫f J dr dθ
となります。これは直交座標を極座標に変換するときの計算です。ここでヤコビアンJが出てきますが、これがうまく説明できなくて悩んじゃったわけです。
よくある説明だと、dx dyとdr dθでは面積が違うからヤコビアンがでてくると言われます。確かに積分の計算は面積の計算だからそれで正しいんです。正しいんですが、なんか図形的な説明な感じがします。
ところで、1次元の変数変換は、
∫f dx = ∫f (dx/dt)dt
です。これは微分の変数変換
dx = (dx/dt)dt
とまったく同じです。図形を使わない、代数的な説明って感じがします。
1次元と同じことを2次元でやろうとすると、
dx = (dx/dr)dr + (dx/dθ)dθ
dy = (dy/dr)dr + (dy/dθ)dθ
dx dy = [ (dx/dr)dr + (dx/dθ)dθ ][ (dy/dr)dr + (dy/dθ)dθ ]
という感じになります(偏微分の記号が書けないのはご愛嬌)。
ここからヤコビアンを導こうとすると、微分形式の理論が登場します。グラスマン代数とか外積代数とかいうやつです。つまり
dx^dx=0
もしくは、
dx^dy = - dy^dx
という計算規則です。これを使うとさっきの式は余計な項がうまく消えて、
dx dy = J dr dθ
になります。めでたしめでたし。
となるはずなんですが、私が悩んだのは、なぜ外積代数が出てくるのか?という点です。
dx^dx=0
となるなら、
∫∫f dx dx = 0
となってxで二回積分すると必ずゼロになってしまいます。んなバカな。ではdx^dx=0ってどういう意味なの?ということに悩んでしまったわけです。
一週間も考えましたが、答えは単純でした。
普通、面積分する領域は適当な二次元の領域です。なので、
∫∫f dx dx
のようにdxで二回積分すると、二回目のx方向の積分する領域がないので、積分がゼロになります。
∫∫f dx dx = 0
積分する領域が2次元の領域だから、同じ方向に二回積分できないということです。これがdx^dx=0の意味です。もちろんx方向に二回目の積分領域が存在すれば、積分はゼロになりません。
またdx^dy = - dy^dxというのは面積に符号があるということです。一次元の積分でも積分する向きを変えれば、符号が変わります。
∫f dx (x = a to b) = - ∫f dx (x = b to a)
二次元でも同様で、積分の方向で符号がつくわけです。高校レベルの数学では、
∫∫f dx dy=∫∫f dy dx
みたいな計算をしちゃいますが、これには注意が必要です。
左辺と右辺で積分する範囲が変わっていないなら、
∫∫f dx dy = - ∫∫f dy dx
が正解です。積分する領域とその方向まで考えないといけません。
私は昔っからこうやって悩んじゃっています。たぶん私は考えることが好きなんです。答えを知っている人からすれば当たり前のことだと思うんで恥ずかしい限りですが、答えにたどり着くとすごくすっきりします。まさにアルキメデスがエウレカっ!と叫んだ気持ちです。
・・・たぶん、こんなことを考えている人はあんまりいないんだろうなぁ。