2011/9/18のコラムです。
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最近、福島の原発から漏れた放射能の測定結果が新聞をにぎわせています。測定するということは非常に重要なことです。孫子の兵法でいう、「彼を知り己を知る」とはつまり現状を測定するということです。測定結果が間違っていると、次の行動を間違えることになります。現実の測定結果を伴わない議論はすべて机上の空論です。
測定は物理学の基本です。ガリレオは振り子の周期を、脈を使って測定したと言われています。相対性理論が生まれたきっかけの一つは、光速が測定できるようになったことです。
物理学の歴史は測定の歴史です。より高精度の測定ができるようになると、既存の理論と測定結果の誤差が分かります。その誤差を説明するには新しい理論が必要です。量子力学では不確定性原理という測定の限界を意味する法則もあります。
少し前に小柴先生がノーベル物理学賞を取りましたが、これはニュートリノの測定に関する研究に対してのものです。田中耕一さんがノーベル化学賞を取ったのは、タンパク質の質量を測定する装置の開発に対してです。高精度な測定は科学を進歩させるものです。
脱線しますが、学力テストも測定の一つです。子供の学力を測定するためのものです。でも人間の能力は単純な尺度では測定できません。テストで同じ点を取った子でも、営業トークがうまい子と、観察力がすぐれた子では全然違います。学力を測定することは、教育政策を作るうえで重要なことです。でもペーパーテストだけでは測定できないものもたくさんあります。測定のやり方が適切でないと、次の行動につながりません。
ところであなたはどれくらい測定を知っているでしょうか? ためしに次の量の測定方法を考えてみてください。
- 原子の直径
- 地球から月、太陽までの距距離
- 宇宙誕生から現在までの時間
- 月の質量
- 太陽の温度
- 台風の風速
- 落雷の電圧、電流
- 縄文時代の日本人の人口
- 日本の輸出総額
- ・・・
教科書に数字が出ているものでも、どうやって測定しているかまで書いていないことも多々あります。私はどちらかというと数字より、どうやって測定したかの方が面白いと思います。